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「花」華雪 / Kasetsu

「華」と「花」。”はな”を指す字の成り立ちの解釈は難しい。
字そのものの成り立ちを辿ると、「華」に源流があり、漢字のルーツとされる三千三百年前の殷王朝で用いられた甲骨文字では、一輪の花が鮮やかに花びらを開いた様子として描かれている。象形文字である甲骨文字の「華」は、縦線で茎を表し、重ねられた横線に花びらの様子を見て取ることができる。

ただ現代においては、花そのものをイメージさせる字として用いられているのは、「花」の字だろう。
「花」は、「華」を簡易に書くために、「華」の〈hua〉という発音と通じる「化」〈hua〉を草かんむりの下に置いたとされている。だから「花」の字には、「化」の字の意味はなんら関係がない。これが字典による解釈だ。
「華」と「花」のこのような例だけでなく、使用される中でかたちを変えた漢字は少なくない。多くのひとびとが使用する中で徐々にかたちづくられていった漢字が多数あるのだ。
こうした”変身”に際して、ときに俗解と呼ばれる字典上の解釈を離れた通俗的な解釈が生まれることがある。
「花」もそうした俗解を持つようになった字のひとつだ。草かんむりに「化」、つまり化けると加えたことで、植物が芽吹き、蕾をつけ、花咲き、枯れゆく変化を表したという解釈がいつからかひとびとの間で語られるようになった。それがいったいいつ誰が語りはじめたのかはわからない。
ちなみに「化」は、生きているひとと死んだひととが向かい合っている様を描いた象形文字に由来を持ち、ひとの生き死にを描いた字と考えられている。

「花」の俗解を字典での解説と比し間違っていると否定するのは簡単だ。けれどこの俗解の存在もまた、その字を生かすものではないかと最近思うようになった。字典上で語られる字の成り立ち、解釈や意味は、定まったものとして記されているが、長い目で見れば、字を支える様々は、実はひとびとがその字を日々使用することで築き上げられ伝えられてきたものでもある。
字はひととともに長いときを過ごし、書体を変え、意味を加えてきた。そう思うと、本来の「華」の字義には関係なくつくりだされた「花」の字に、あとからもっともらしい字義が加えられた背景にも、ひとびとの生活の中にいつのまにか溶け込み、生きてきた字のあり方のひとつを見ているように思えてならない。

 
▪️作品展示・販売期間

「花」華雪 / Kasetsu
2018年7月7日(土) – 7月14日(土) 11:00 – 19:00
(最終日7月14日(土)のみ17:00にて展示終了)

SPOONBILL南青山本店 (東京都港区南青山4-23-9)

レセプションパーティー 7月7日(土) 17:00 – 20:00
※レセプションパーティーでは、華雪本人による公開制作『「木」を書く』を実施致します。
※作品はすべてご購入頂けます。

17:00〜 レセプションスタート
18:00〜19:00 「木」の公開制作
19:00〜 自由観覧
20:00 閉会の挨拶
 

 
 
▪️プロフィール

華雪 / Kasetsu
書家1975年、京都生まれ。92年より個展を中心に活動。 〈文字を使った表現の可能性を探る〉ことを主題に、国内外でワークショップを開催。 刊行物に「ATO跡」(09.betweenbooks)、「書の棲処」(06.赤々舎)など。 作家活動の他に、「コレクション 戦争×文学」(集英社)など書籍の題字なども手がける。

 
企画:(株)STARMINE PLANNING
主催:SPOONBILL南青山